社労士 ストーリー学習版 2026
体系図 → 人生ストーリー → 法律の意味 → 確認問題 → 科目へ逆引き
STORY-FIRST LEARNING

科目を覚えるのではなく、
人生の出来事に法律を貼り付ける

この教材では、労基法・健保法・雇用保険法・年金法を順番に勉強しません。架空の主人公「佐藤遥さん」が働き始め、病気・出産・失業・介護・老齢・死亡まで経験する流れの中で、必要な法律がその都度登場します。

学習の設計
最初に体系図で「何がどこにあるか」を掴み、次にストーリーで制度の意味を体得し、最後に科目別冊へ戻って条文・数字を精密化する。理解→位置づけ→暗記の順です。
PART 0

最初に見る全体体系図

社労士試験は、本人・会社・国の3者が、人生上のリスクをどう分担するかを扱う試験だと捉えると整理しやすくなります。

本人の人生
就職契約・採用
働く賃金・時間・安全
病気/事故健保・労災
育児/介護休業・給付
失業雇用保険
老齢/死亡年金
会社の義務
雇う労働条件明示
管理する労働時間・安全
保険に入れる適用・届出
保険料を負担労使折半等
離職時処理資格喪失・離職票
国・行政
法律を作る国会・厚労省
制度を運営年金機構・保険者
審査する審査官・審査会
財政を持続保険料・公費・積立
次の改正白書・審議会
科目の位置づけ
労基・労契・安衛は「働く場のルール」。労災・雇用・健保・年金は「人生上のリスクを保険で支える仕組み」。徴収法・社会保険料は「誰がどう財源を集めるか」。一般常識は「制度全体がなぜそうなっているか」を問います。
PART 1

一人の人生で全科目をつなぐ

主人公は22歳で会社に就職します。出来事ごとに、本人・会社・行政・財政の4視点を重ねます。

22歳
Scene 1|会社に入る ― 「契約自由」だけでは働けない
労基労契均等法憲法・民法

遥さんは新卒で会社に就職します。民法だけを見れば、会社と本人が合意して雇用契約を結ぶ話です。ただし、労働者は生活のために働くので、契約自由だけに任せると交渉力の差が大きすぎます。そこで労働法が民法を修正します。

1
民法:契約の一般原則雇用は労務提供と報酬支払の合意。
2
労基法:最低基準賃金・労働時間・休暇などは当事者が自由に下回れない。
3
労契法:契約の運用安全配慮、就業規則変更、解雇・雇止めなどを調整。
本人就業場所・業務、賃金、労働時間、契約期間などの労働条件を確認する。
会社労働条件を明示し、最低基準を下回らない契約を作る。
行政労基法・均等法・職安法等で採用と雇用関係を規律。
制度の意味「自由契約」では守れない生活基盤を法定最低基準で補強する。
なぜ労基法が必要か民法だけだと「本人が同意したから長時間労働も低賃金もOK」になりかねません。労基法は同意しても下回れない最低線を作ります。
確認問題|会社と本人が合意すれば、労基法の最低基準より不利な条件も有効?
×。労基法の基準に達しない労働条件は、その部分について法定基準に置き換えられます。
23〜27歳
Scene 2|毎日働く ― 賃金・時間・休息・安全が一体で動く
労基安衛徴収

仕事が始まると、試験科目は「労働時間」「賃金」「休日」「年休」「安全衛生」に分かれます。しかし実生活では一つの勤務日の話です。会社が働かせる時間を決め、賃金を払い、休息を確保し、健康障害を防ぐという一連の管理です。

会社が遥さんを働かせる
時間1日8時間・週40時間が原則。超えるなら36協定等。
賃金全額払い、直接払い、一定期日等の原則。
休息休憩、休日、年次有給休暇。
健康安衛管理、健診、ストレス・長時間労働対策。
混同注意「法定労働時間」と「所定労働時間」は違います。会社の定時が7時間なら、7→8時間は所定外でも法定時間外ではありません。
確認問題|本人が希望すれば36協定なしで法定時間外労働をしてもよい?
×。本人の個別同意だけでは法定時間外・休日労働の根拠になりません。
28歳
Scene 3|病気で休む ― 健康保険か、労災か
健康保険労災安全配慮

遥さんが肺炎で2週間休みました。ここでまず見るのは「仕事が原因か」です。同じ“病気で休む”でも、業務外なら健康保険、業務上なら労災保険へ制度が分かれます。

病気・けがは仕事が原因か?
業務外健康保険の療養の給付、傷病手当金等。
業務上労災保険の療養補償給付・休業補償給付等。
なぜ分けるか健康保険は一般的な疾病リスクを労使の医療保険で支える制度。労災は仕事に伴う危険を事業主側の保険料で社会化する制度です。
本人業務外傷病なら傷病手当金は連続3日の待期後、4日目から対象。
会社労災なら災害原因・安全配慮・再発防止も問題。
行政業務遂行性・業務起因性等から労災該当性を判断。
財源健保は労使保険料。労災保険料は原則事業主負担。
確認問題|業務上のけがで会社を休んだ場合、健康保険の傷病手当金が基本給付になる?
×。業務災害は原則として労災保険側で処理します。
30歳
Scene 4|妊娠・出産・育児 ― 労働法と保険給付が同時に動く
労基・育介法健保雇用保険

妊娠すると、「働かせ方の規制」と「休業中の所得保障」が同時に必要になります。ここが科目別暗記では見えにくいところです。

1
妊娠・産前産後労基法の母性保護、健康保険の出産手当金・出産育児一時金。
2
育児休業育児介護休業法が休む権利・両立措置を規律。
3
休業中の所得雇用保険の育児休業給付、出生後休業支援給付。
4
復職後育児時短就業給付、柔軟な働き方措置、子の看護等休暇。
2025改正3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者について、事業主は5措置から2つ以上を用意し、労働者は1つを選択。2025年10月施行です。
雇用保険2025年4月に出生後休業支援給付・育児時短就業給付が創設。
確認問題|育児の法制度は「休業できるか」だけ覚えればよい?
×。休業権、会社の両立措置、休業中・時短中の所得保障を別レイヤーで理解します。
34歳
Scene 5|会社を辞める ― 失業保険ではなく「再就職までの制度」
雇用保険職安法徴収

遥さんは転職のため退職します。雇用保険は単なる「失業したらお金をもらう制度」ではありません。失業中の生活を支え、職業訓練や再就職を促し、労働市場を回す制度です。

1
離職会社が資格喪失・離職票等を処理。
2
受給資格被保険者期間、離職理由、働く意思・能力を確認。
3
基本手当待期・給付制限・所定給付日数。
4
再就職・訓練再就職手当、教育訓練給付、教育訓練休暇給付など。
制度の意味雇用保険は「失業を長引かせる給付」ではなく、生活を支えながら労働移動を円滑にする労働市場政策です。
確認問題|雇用保険の基本手当は、退職した人なら働く意思がなくても受給できる?
×。就職する意思・能力があり、求職活動をしている「失業」の状態が必要です。
45歳
Scene 6|親の介護 ― 本人の介護保険と、自分の雇用保険が交差する
介護保険育介法雇用保険

遥さんの母に介護が必要になりました。母の側では介護保険サービスが動き、遥さんの側では介護休業・介護休業給付が動きます。同じ「介護」でも、対象者が違います。

介護される親介護保険の要介護認定、介護サービス、利用者負担。
介護する労働者育介法の休業・休暇、雇用保険の介護休業給付。
混同注意介護保険から介護休業中の賃金が出るわけではありません。介護保険は要介護者へのサービス保障、雇用保険は労働者の所得保障です。
確認問題|介護保険と介護休業給付は、同じ被保険者・同じ保険事故を対象とする制度?
×。対象者と制度目的が異なります。
52歳
Scene 7|障害が残る ― 年金は「今の勤務先」より初診日を見る
国年厚年健保・労災

遥さんは病気の後遺症で障害が残りました。年金の障害給付では、現在どこで働いているかよりも「初診日にどの制度に加入していたか」が重要です。

障害年金は何から見る?
1. 初診日国民年金か厚生年金かを決める入口。
2. 納付要件保険料納付状況を確認。
3. 障害状態障害認定日・等級・事後重症等。
なぜ初診日かどの保険制度がそのリスクを引き受けていた時に疾病が始まったかを確定するためです。
確認問題|今は厚生年金に加入しているので、過去の国民年金加入中に初診日のある病気も障害厚生年金になる?
×。初診日の制度加入状況が基準です。
60〜65歳
Scene 8|定年・再雇用 ― 雇用政策と年金が衝突する
高年齢者雇用厚年雇用保険

定年後も働く人が増えると、「働けば年金が止まる」「高齢者を雇いたいが賃金は下がる」という問題が出ます。高年齢者雇用安定法、雇用保険、高齢期の年金が同じ場面で接続します。

本人老齢年金、在職老齢年金、高年齢雇用継続給付等を確認。
会社65歳までの雇用確保措置等、高齢者雇用政策へ対応。
政策「働ける高齢者は働く」方向と、年金の所得保障の中立性を調整。
2026在職老齢年金の支給停止基準は2026年4月から65万円。
改正の意味在職老齢年金の基準引上げは、高齢者就労を阻害しにくくする政策です。
確認問題|在職老齢年金は、働いている高齢者の老齢基礎年金まで支給停止する制度?
×。主に老齢厚生年金の調整制度です。
65歳以後
Scene 9|老齢年金を受ける ― 1階・2階・3階を重ねる
国年厚年DB/DC/iDeCo

遥さんの老後所得は、老齢基礎年金だけではありません。会社員としての老齢厚生年金、企業年金、iDeCo等が重なる可能性があります。

1
1階:老齢基礎年金受給資格期間10年以上、原則65歳。
2
2階:老齢厚生年金厚生年金加入期間・報酬に応じた上乗せ。
3
3階:私的年金DB・企業型DC・iDeCo等。
なぜiDeCoが拡大したか一社に長期勤続する前提が弱まり、転職・自営業・高齢就労でも個人単位で老後資産を持ち運べる仕組みが必要になったためです。
確認問題|DCは将来の給付額をあらかじめ確定する制度?
×。確定するのは拠出ルール。給付は運用成果等で変わります。
死亡時
Scene 10|亡くなる ― 民法の相続と遺族年金は別ルート
遺族年金民法未支給給付

遥さんが亡くなったとき、財産は民法の相続で承継されます。一方、遺族年金は社会保障法上の独自の遺族範囲・順位・生計維持要件で支給されます。「相続人=遺族年金受給者」ではありません。

相続民法上の財産承継。配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹等のルール。
遺族年金年金法独自の給付。遺族基礎年金と遺族厚生年金で対象範囲が違う。
混同注意民法上の相続順位を、そのまま遺族厚生年金の受給順位に使わない。
確認問題|法定相続人であれば遺族年金も当然受けられる?
×。社会保険法独自の要件があります。
PART 2

同じストーリーを「会社側」から見る

本人の権利だけでなく、会社の届出・保険料・安全管理を一枚に重ねると徴収法や適用関係が理解しやすくなります。

1
人を雇う労働条件明示、採用差別規制、就業規則。
2
保険関係を成立させる労災・雇用保険、健康保険・厚生年金の適用。
3
保険料を計算・納付労働保険料は賃金総額、社会保険料は標準報酬月額・標準賞与額が軸。
4
勤務中を管理時間、賃金、安全衛生、育児介護、ハラスメント。
5
資格変更・離職を処理資格取得・喪失、算定基礎、月額変更、離職票等。
徴収法の意味「給付の法律」と「保険料を集める法律」を分けるために徴収法があります。給付法だけ勉強すると、制度がどう財源を確保するかが見えません。
PART 3

行政・財政・政府動向を物語に戻す

人生の各場面で給付が出るためには、制度を作る行政機関と財源が必要です。

政策形成
統計・白書問題発見
審議会専門検討
法案国会
成立・公布
施行現行制度
年金財政
保険料
国庫負担
積立金
給付
5年ごと検証約100年の均衡
厚生労働省制度企画・法令・監督・財政検証。
日本年金機構年金の適用・徴収・記録・給付実務。
GPIF年金積立金を管理・運用。
社会保障審議会年金・医療・介護・企業年金等を専門審議。
政策の罠審議会で議論された=現行法、ではありません。閣議決定=法律でもありません。試験では「どの段階か」を入れ替えます。
PART 4

判例はストーリーの「境界線」を示す

判例名を暗記するより、その場面で何が曖昧だったかを見ると覚えやすくなります。

採用|三菱樹脂企業の採用自由と憲法の私人間効力。
「雇入れ」と「雇入れ後の労働条件」を区別。
内定|大日本印刷内定で労働契約が成立する場合がある。取消しは自由ではない。
就業規則|秋北バス→フジ興産合理的な不利益変更と周知要件。
解雇|日本食塩製造解雇権濫用法理→労契法16条。
雇止め|東芝柳町・日立メディコ実質無期型・更新期待型→労契法19条。
配転|東亜ペイント→2024最高裁配転権濫用の限界+職種限定合意ならそもそも権限がない。
安全|陸上自衛隊→電通安全配慮義務を物理的事故から過労・メンタルへ具体化。
社会保障|堀木→2025生活保護広い政策裁量はあるが、判断過程は司法審査される。
PART 5

ストーリーから試験科目へ逆引き

本編で理解した後、科目別冊は「精密化する辞書」として使います。

労基・安衛Scene 1, 2, 3, 4
採用後の最低基準、時間、賃金、安全、妊産婦。
労災・徴収Scene 3+会社側
業務災害、通勤災害、給付、保険料。
雇用・徴収Scene 4, 5, 6, 8
失業、育児、介護、高齢雇用。
労一Scene 1, 4, 5, 8
労契、均等、育介、高齢、雇用政策。
健保Scene 3, 4
療養、傷病手当、出産、被扶養者。
社一Scene 6, 9+行政
国保、介護、後期高齢、DC、審査制度。
国年Scene 7, 9, 10
基礎年金、障害基礎、遺族基礎。
厚年Scene 7, 8, 9, 10
老齢厚生、障害厚生、遺族厚生、在職。
憲法・民法・判例Scene 1, 10+判例
契約、平等、生存権、相続、法解釈。
推奨学習ループ
①このストーリー版を読む → ②理解が曖昧な場面だけ科目別冊で精密化 → ③過去問を解く → ④間違えた肢をストーリー上の場面に戻す。科目を最初から順に潰す必要はありません。